
厳島神社観月能
厳島神社の能はずっと以前から行きたいと思っていた。
海に浮かぶ能舞台という設定に惹かれた。
満月の夜、満潮時。
海に照らされる月の明かりと、水面の揺らぎ、
回廊にぶつかる波の音。
海に浮かぶ能舞台で繰り広げられる能の世界。
遠くには、ライトアップされた赤い鳥居が浮かぶ。
真っ暗な回廊に小さく灯される灯篭のほのかな明かり。
客席は時が止まったような静寂と漆黒の闇。
自身の存在さえ無になったような瞬間。
能役者の舞う厳かで幻想的な能の世界。
まさに“幽玄”
薪能は何回か経験したが、
観月能は全く別世界。
実は、満月ではなく雨だったが・・・、
回廊の屋根を打つ雨音が、笛や鼓の能楽と融合し、
また一段と魅力のある舞台となった。
ひたひたと打つ波の音を足元に聞きながら、
長い回廊を歩いて、
現実の世界に連れ戻された。
能が始まると照明は全て落とされ、能舞台だけ明かりが灯る。