人が亡くなるということ
2017/03/17
“当初よりステージIV、余命1年の告知を受けておりましたので、
今日の日が来る覚悟はしておりましたものの、
弟を失いましたこの喪失感は何とも言葉になりません。
幼少期より今日に到るまでの二人の生い立ちや、同じ俳優として過ごした日々が思い返され、
その情景が断ち切れず、辛さが募るばかりです。“
これは、3月14日に亡くなった渡瀬恒彦さんを悼むお兄様、渡哲也さんのコメントです。
先日、姉の3回忌を終えたばかりの私にとって
彼のコメントに涙がとまらない。
姉もステージⅣで余命半年と言われたが、4年半生きてくれた。
ガンと共に生きて、人生まっとうするのかと一時は期待したが、
明るく気丈な姉は、全てを受け入れ、
最後まで楽しく生きて旅立った。
70年の生涯だった。
姉の死は、自分の存在自体も空虚になり、
身体の中から疼いてくるような想像以上の悲しみだった。
姉がこの世に居ないと思うと、呼吸困難になりそうになる。
今でも時々、胸塞がれるような悲しみが、胸の底から這い出してくる。
どうやっても戻れない日々は延々と続く。
小さい頃、二人で過ごした数々が思い出される。
誰とも共有できない事柄、日々。
文房具家のおばさん、隣のテルちゃん。
傘を持って、二人片寄せ父を待った改札口。
お揃いのフレーヤーのワンピース。
あつい夏の日。
かぶりついたトマトの味。
もう話す相手がいない。
トルコ
2017/03/13
30年以上も前、
まだ日本にトルコ風呂という名前の下品な場所があった頃、
トルコのイメージアップのため、
トルコ観光局の招待を受けた友人のお供でトルコに行った。
エーゲ海に面した美しい古代都市イズミール、
シーザーが出てきそうな遺跡の数々。
イスタンブールの迷路のようなバザール。
アジアと欧州の分岐点、ボスボラス海峡。
コーランの響き渡るアヤソフィア。
トルココーヒーをカフェでのんびり飲み、
地中海の風を身体じゅうに受け、
ゆったりとした時間の流れに、
悠久の時を感じていたのを思い出す。
想い出の中のトルコは、
人々も優しく穏やかで、美しい平和な国だった。
しかし今は、シリア、イラク、ISIS等、紛争地帯に面しているため、
国情が不安定になって、危険な国になってしまった。
また、エルドアン大統領が誕生して以来、
言論の自由が奪われ、
汚職事件を報道した記者は逮捕されたり、
政権に反対するジャーナリストは弾圧を受け、懲役刑になるとか。
彼もまた、強いトルコを目指しているという。
数年前の学生の反政権デモはすっかり影をひそめ、沈黙が支配している。
昨年のクーデター未遂以降、弾圧は一層激しくなった。
日本の明日の姿を想像してしまう。
強いアメリカ、強い日本、
行きつく先に何があるというのか・・。
春爛漫はもうすぐ
自国ファースト
2017/03/03
私の好きなテレビ番組に英国ミステリーの刑事フォイルがある。
英国ヘイスティングスが舞台。
イギリス独特の田園風景が海辺の町に広がって美しい。
時は第二次大戦中。
ヘイスティングは一見穏やかで、
景色も登場人物たちも美しく、
もんぺ姿や国民服で焼夷弾に逃げ惑う様子がないので、
画面では、戦争だと分かりづらい。
しかし事件の背後には、
ドイツから逃れてきた兵士の話や
脱走兵や
ナチスの話。
一般市民からのイタリア人やドイツ人への差別。
戦争ゆえの悲劇や残酷さが、ちりばめられ、
心は荒んで、不安と恐怖の日常が描かれている。
今現在、日本でも外見は変わらない日常に見えても
迫りくる危機が、足元に押し寄せ、
砂上の楼閣の上に立っているような感じがする。
平和はもろくも崩れ、
気がついた時は逃れられない事態になるのではないか。
このまま、利己主義、愛国主義が世界中蔓延したら行き着く先は戦争。
日本だけでも戦争をしない国として、
70年以上戦争をせずして平和を構築した国として、
世界に模範を示す時ではないか。