先生のオリザニン
2014/06/27
先日、三越劇場の「先生のオリザニン」を鑑賞した。
チケットがあったので、あまり期待しないで行ったが、感動的だった。
オリザニンとは、ビタミンB1の別称。
鈴木梅太郎が当時の国民病である”脚気”の研究で見つけた有効成分。
同時期に研究していたフンク(ポーランド)がビタミンと命名して、
ビタミンという名が知れ渡った。
本当は梅太郎の方が発見が少し早かった。
鈴木梅太郎は、静岡の農家の出ながら徒歩で東京に向かい、
農林学校(のちに東京帝国大学に併合)に入学し、教授にまでなった。
種々の研究成果を残しただけでなく、篤志家としても文化勲章を授与された。
東京で書生となってお世話になったのが、
辰野金吾;建築家(東京駅、日銀本店、有名な小樽支店、国技館、霊南坂教会等)
その息子、辰野隆は小林秀雄、三好達治を育てた東大教授の仏文学者
その娘は、梅太郎の妻になる。
梅太郎が師事した古在由直(農芸化学者、のちに東大総長)は、
日本で最初の公害として有名な足尾鉱毒事件で、銅汚染を実証して、
田中正造たちをバックアップして産業界と戦った。
二人の博士は、
高潔、純粋、誠実、科学者としての良心があった。
そのうえ二人とも、日本の教育界の発展に貢献し、
農業分野、栄養、食品分野等、日本の産業界にも多大な利益をもたらした。
明治時代は、指導者となるべく人々は、みな高い地位で繋がっていて、
そういう指導者のもと、時代が正しいと思われる方向に導かれていた。
ひるがえって現在は、指導者たるものがいるのだろうか?
浅田次郎「終わらざる夏」から感動的な文章
2014/06/16
戦争に翻弄された市井の人々の感動的な言葉に泣かされた。
疎開地で終戦をむかえた子供たちに先生が話す言葉。
『天皇陛下が何とおっしゃろうと、みなさんに耐えがたきを耐えとは言えません。
みなさんがこれまでずっと、耐えがたきをたえ、忍びがたきを忍んできたからです。
お父さんが戦死なさった人、お母さんやご家族が空襲の犠牲になった人、
ほとんどの家は、焼けてしまいました。
もうがまんできないことはがまんしなくていい。
自由に物を考え、自由にしゃべり、自由に行動して、
ただしその自由な行動については、おのおのが責任を持って下さい。
しっかり勉強をして、この戦争で亡くなられた方々を、けっして犬死としないように、
平和で豊かな日本を作り直して下さい。』
年齢制限ぎりぎりで占守島に送られ、戦死した通訳者が奥さんに
宛てた手紙で、
『戦争がついに終わりました。これだけの尊い人命が失われれば、
もう二度と戦争は起こりますまい。
仮に戦う事が動物の本能であったとしても、人物の霊長たる人類は
行為の愚かさに気付いて、永遠に戦争という悪業に封印をすると僕は確信します。
略
戦争の結果としての平和はかくも虚しく、勝とうが負けようが
失われた命は帰ってこないのだと悟るでしょう。
略
二度と戦争はせぬ事。人類は必ずそう誓いを立てます。』
ある方が仰っていた。
3代続くと歴史は忘れ去られ、同じ間違いを繰り返すと。
3年目のハイビスカス
2年目の紫陽花
ポカラの会
2014/06/02
もう25年くらい前に、
サイババというインドの超能力者を紹介した「アガスティアの葉」を読んだ。
その中にネパールのポカラというヒマラヤのふもとの街で、
ネパールの貧しい人々のために全霊をささげておられる大木神父の事が
記されていた。マザーテレサの男性版に深く感動した。
心打たれながら読み進んでいると、
本の最後に大木神父への寄付の宛先、ポカラの会があった。
日本で大木神父を支援している倉光先生。
居ても経ってもいられず、すぐ寄付させて頂いた。
大した額ではなかったにもかかわらず、
「このお金はある家族の1年分の、、、になる、あなたの温かい思いやりは、、、、云々」
見ず知らずの私への倉光先生の心のこもった返信に涙が止まらず、
友人知人に見せては感動していたのを、今でも忘れることは出来ない。
その後も、寄付するたびに自筆のお礼状や、カードが届く。
倉光先生は集まった寄付をポカラまで運び、時には役人に
搾取されそうになりながら、一銭も無駄にすること無く届け続けた。
一度でも寄付した方には、ポカラの会の会報を自費で郵送していた。
このお金は郵送費に当てて下さいと、時々送金しても、
ポカラの会に入れますと、決して受け取らなかった。
80歳を過ぎてもお元気に飛び回っていらした倉光先生が、
今年の始め心筋梗塞で突然亡くなられた。
30年以上にもわたったポカラの会の活動は終焉した。
大木神父、倉光先生、シスター川岡、ポカラの会の方々、
私はクリスチャンではないが、
本物の方たちと不思議な縁で結ばれていたことは私の宝であった。
心の支えであったポカラの会は、倉光先生とともに消えてしまった。
けなげに咲いて夏を告げる道端の花