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豊かさという事

2016/05/30


大阪から野菜を送ってくれる友人が、

塩野七生の本(私は好みではない)に感化されて、

シーザーが辿ったヨーロッパ各地探訪を実施している。

 

企業戦士だった彼は、

ビジネス以外、海外旅行は行くことが無かったので、

仕事を離れ、初老の男一人旅を楽しんでいる。

 

その彼が、旅行中、ヨーロッパの豊かさをつくづく感じると言っていた。

国が破たん寸前でも、仕事がなくたって、

豊かにゆったりと時が流れ、楽しそうに生きていると。

 

ヨーロッパの人は、長い歴史の中で深い文明に裏打ちされたDNAで、

物質的豊かさを求めず、自分に相応しい人生の楽しみ方を知っているのでは。

 

物質的豊かさのみ求めてきた資本主義は、

結果、豊かにはなれなかった。

 

リッチモンドの英国人講師が、

日本は、日本人が持っている倫理観をすっかり失くしてしまった。

イギリスも時代の変遷はあっても、

根底に流れる英国魂は脈々と受け継がれていると、いう。

 

「貧しい人とは、少ししか物を持っていない人では無く、

無限の欲があり、いくらあっても満足しない人だ」と

演説したホセ・ムカヒ、ウルグアイ大統領の言葉が重なる。

 

 

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反応工程

2016/05/23


宮本研の”戦後三部作”のひとつ『反応工程』を紀伊國屋ホールに

観に行った。

 

1945年8月の終戦前夜、九州の化学工場で働く学徒動員たちの物語。

赤紙・脱走兵・憲兵・日和見教官・えばり腐った軍人・等々、

いつもの戦争物語で

正直、あまり引き込まれるような展開にはならなかった。

 

戦争が終わり数か月後、主人公の青年が工場に戻ってきて、

立ちすくむ場面で終わる。

想定内の展開であまり感動的ではなかったのだが、

観終わって不思議に涙がこぼれた。

 

終戦になって平和になっても、失われた尊い命、失われた時は帰ってこない。

戦争の理不尽さ・悲惨さ・人間の愚かさに、

昨今の日本の情勢を重ねて暗い気分になった。

 

あの時、日本中が二度と戦争はしないと強く誓ったはずなのに、、、。

 

また、演じている役者さんがみな若く、

演技を離れ、この状況をどう感じているのか聞いてみたかった。

 

古典を演じているような感じなのか、

戦争をファンタジーのように感じていないか、

それとも戦争が近づいているような感じを自分の事として捉えているのか。

 

観客はお年寄りが多かったが、

沢山の若い人に観てもらい、

想像力を働かせ、我が事として考え行動して欲しい。

貴方の未来を決めるのは貴方たちなのだから。

 

 

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働くという事

2016/05/13


カナダ人のKip A.Cates(鳥取大教授)のエッセイで、

北米のpart-time job事情によると、

 

北米では学業の傍ら、パートタイムで働くことを奨励される。

小学生でも例外ではない。

 

Cates氏の始めのアルバイトは、9歳の時の新聞配達。

12歳の時はベビーシッター。

近所の若夫婦の子供と遊び、寝かしつけ、

その後は宿題をやったり、TVを見たりして過ごす。

他人の子供の世話をするという責任感が試される。

 

また、近所の芝刈りをやったり、

中高生になると、

皿洗いやウエイター、郵便局、テニスコーチ等を経験した。

 

北米では、子供時代にアルバイトすることは、

社会に出てからの訓練であり、責任感を養える貴重な経験だと、

考えられている。

 

日本では、

貧困の子供たちは別にして、

子供は勉強に専念するものと、殆どの親は思っている。

 

大学生になっても、あまりアルバイトをせず、

少しお金を稼ぐくらいなら、じっとして出かけず、

お金を使わない生活の方を選ぶらしい。

 

小さい時から社会の一員としての自覚があり、

大人と対等に付き合えるようになるため、

日本の若者のように、

上司に何か言われたら、辞めてしまったり、

親が怒鳴り込んできたり、はありえないのではないか。

 

子供時代の働いた経験が、

matureな人格を形成するのだろう。

 

アメリカ映画で見るような小さな子供が健気に働いている姿は

微笑ましくて可愛いと思っていたが、

そのような、効果があったのだと、日本との違いを思った。

 

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